「指しゃぶり」と「おしゃぶり」

「指しゃぶり」行動や「おしゃぶり」使用は、食べ物を摂取する練習として適しているといわれています。海外ではSIDS対策として、寝る時におしゃぶりを使うことを推奨しています。SIDS(シッズ)とは乳幼児突然死症候群(:Sudden Infant Death Syndrome)のことです。ただし、長期間にわたる「指しゃぶり」や「おしゃぶり」使用は、歯列や顎骨に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な時期(2歳半から3歳頃)に止めさせることが大切です。

生後2~4か月ごろになると「ハンドリガード」というしぐさが見られるようになります。「ハンドリガード」とは赤ちゃんが自分の手をじっと見つめたり、指や拳を舐めたりするしぐさのことです
この「ハンドリガード」のしぐさの後に「指しゃぶり」のしぐさが起こります。
このような行動は、ストレスや不安から逃れ、安心感を得る行為の一つと考えられています。赤ちゃんは、指や拳を舐めたり、指をしゃぶったりすることで、お母さんのおっぱいを吸っているのと同じような心地よい安心感を得ているのです。

「おしゃぶり」用品も同様の効果があると考えます
また、お母さん側にとっても、「おしゃぶり」を与えていればおとなしくなるため、ぐずった時のお助けグッズとして有効だと思います。

赤ちゃんが1歳半くらいになると発語やことばを覚えるようになってきます。
この時期になったら、「おしゃぶり」用品は少しづつ使用時間を減らしていくとよいと思います。使いなれた「おしゃぶり」はなかなか急にはやめられませんから…
「指しゃぶり」は、成長過程での自然な行動なので、2歳半頃までは無理にやめさせる必要はありませんが、これも徐々に言い聞かせてやめるように誘導して下さい。この時期は「おしゃぶり」「指しゃぶり」の卒業準備開始の時期です

3歳ころになると乳歯が全部生え揃ってきます(乳歯列完成時期)この時期になると「指しゃぶり」「おしゃぶり」は卒業時期です。
指しゃぶりによって前歯に圧力がかかり、前歯が前に傾いたり、歯を支える骨も前方に出てきて、出っ歯や開口になる原因となります。
乳歯の時期でも、乳歯の位置が永久歯の歯並びのガイドになっているため、永久歯の歯並びにも悪影響があるのです。乳歯列完成以降の「指しゃぶり」は矯正的には「悪習癖(あくしゅうへき)」と言われています
指を吸う力も増してきて、指にタコができたりしてしまいます。

乳児期の成長には個人差がありますので、「指しゃぶり」「おしゃぶり」の卒業時期は目安としてお考え下さい。
4歳以降は歯並びに影響が出る可能性があるため、歯科矯正医にご相談ください。

厚生労働省が、おしゃぶりの長時間の使用による咬み合わせへの影響について、母子手帳に記載しています次はその引用です。

「長時間にわたり、長い期間おしゃぶりを使用すると、歯ならびや噛みあわせが悪くなる場合があります。また、おしゃぶりをくわえていると、お母さん・お父さんが声をかけたり、赤ちゃんが声を出す機会が減り、赤ちゃんとのコミュニケーションも少なくなります。 おしゃぶりは早めに卒業しましょう。また、歯ならびや、口や唇の形が心配な場合には、早めに歯科医師等の専門家に相談するようにしましょう。」

母子健康手帳「育児のしおり 幼児期 1歳頃」