咬合崩壊をどう治すか…
歯科大学では正常咬合の概念を学ぶ。補綴(ほてつ)学という専門分野があり、歯牙の欠損を生じた口腔内を、正常な状態に回復させる為の知識と方法論を学ぶのだ。歯科で言う補綴(ほてつ)学とはブリッジや入れ歯を作るための学問である。
補綴学(ほてつがく)では正常咬合の位置を割り出すために、咬合器(こうごうき)という顎の動きを再現できる器機を使って正しい歯の位置を再現するのである。顎運動(歯の動き)と咬合器の動きをリンクさせ、個人に合わせて歯の位置や形態をカスタマイズして歯冠や入れ歯を作成する。歯牙の解剖学的形態を考慮しながら、「これが正しい咬合だ」・「これが正しい入れ歯の形態だ」というものを座学と実技を含め数年かけて学習するのだ。たかが「歯」だが奥は深い。
ただ、臨床現場では座学で習った正常咬合は多くの場合患者さんに受け入れられない。咬合崩壊した咬合に長年慣れてしまっているからである。
大学では咬合崩壊を生じた咬合を正常に戻すための知識を教えるが、臨床では多くの場合、咬合崩壊の進行を防止するよう咬合を再構成することに注力する。
口腔内の咬合崩壊は顎関節にも異常をきたすため、顎関節とのバランスも考慮しなければならない。経年的に歯は磨耗もする。また、歯が欠損して数年経つと、歯が植立していた歯肉の土手(歯ぐきや骨)も自然吸収して大きく変化する。元あった場所にはもはや歯が並ばないのである
急峻な山の登頂を目指すか、7合目・8合目を目指すかは患者さんの希望によるが、登頂を目指すには準備も費用も時間もかかってしまう。
諸々の悪条件の下で本来の正常咬合を追求していくのには無理が生じる場合も多く、今更ではあるが座学と臨床のギャップにジレンマを感じている歯科医は私だけではないだろう…

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