BRONJ(ブロンジェイ) 2023年ポジションペーパー
ポジションペーパーとは、新しい問題や症例に関する見解をまとめたもので、各学会などで統一見解として発表されるガイドラインのことをいいます。
BRONJ(ブロンジェイ;Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw)は「ビスホスホネート製剤による顎骨壊死」と訳され、骨吸収抑制剤服用の難治性副作用として報告されたまだ新しい言葉です。
骨折・骨粗鬆症・癌の骨転移予防等の骨代謝関連に使われる薬剤の副作用で生じる症状・現症ですが、それ以外の薬でも顎骨壊死が報告された為、現在は МRONJ(ムロンジェイ=Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw=「薬剤関連顎骨壊死」)という名称に統一されています。
BRONJ(ブロンジェイ)見解の経過
2003年 アメリカで初めて報告
(ビスフォスホネート製剤による顎骨壊死の報告)
2010年 日本ではじめてポジションペーパーが症例発表
(日本口腔外科学会を含む5学会ではじめて報告)
2012年 ビスホスホネート製剤(BP製剤)に製剤名称変更
「抜歯の際は3ヶ月程度の休薬が望ましい
経口・注射の発症リスクに差がない」 との発表
2014年 当医院で経験したMRONJと思われる症例を
「日本口腔インプラント学会」に主論文にて発表
2016年 「BP製剤服用中は休薬せずに侵襲的治療を極力避ける」に変更
2023年 「原則 抜歯時にはBP製剤服用中は休薬しないと提案」に変更
治療の基本方針は
①骨壊死領域の進展の抑制
②疼痛・排膿・などの症状の緩和とQOLの維持
③定期的経過観察と口腔管理を徹底
とされ、治療のゴールは治癒ではないのが現状である
МRONJ(ムロンジェイ)発生機序はだいぶ解明されてきましたが、治癒させるための処置方法がはっきりと確立しておらず局所の清潔を保つしかないのが現状です。
また、当薬剤は癌患者に高濃度で使用され、臨床経験的には癌の進行とともに(免疫力の低下とともに)進行が早くなるように思えます。更に癌疾患で全身症状が悪化した状態での歯科治療は、通院を含め無理があるため緩和治療が最も現実的だと考えます。
当医院で経験したMRONJ(BRONJ)は悪性腫瘍で加療中でありましたが、体力低下とともに症状が悪化し、歯科より優先される処置の必要が生じたためQOL(クオリティ オブ ライフ)対応しかできない現状でした。
発症に係わるリスク因子としては、骨粗しょう症治療薬・抗悪性腫瘍薬・免疫抑制薬などの薬剤服用、糖尿病・リウマチ・透析・喫煙などの全身的要因、口腔内の衛生不良・歯周病などの局所的要因が挙げられますが、
複合的に関連して免疫が低下すると発リスクが上昇すると考えられます。
МRONJ(ムロンジェイ)の確立した投薬方法、治療方法の報告が待たれるところです。