BRONJ(ブロンジェィ)
BRONJ(ブロンジェィ)は「Bisphosphonate-Related OsteoNecrosis of the Jaw」=「ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死」と訳します。
ビスホスホネート系薬剤を内服している患者さんに発生する顎骨だけに生じる副作用・合併症で、確定している治療法は無いのが現状です。
抜歯後や、口腔粘膜に対する外傷後に発現する頻度が最も高く、顎骨の露出が次第に大きくなってしまう副作用だが、これらの口腔内に対する誘因がなく発現している症例も多く報告されています。
現在はビスホスホネート系薬剤だけではなく広範な薬物においても報告されているため「MRONJ」=「薬物関連顎骨壊死」と名称が変わっています。
MRONJ(ムロンジェィ)は「Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw」=「薬剤関連顎骨壊死」と訳します。
BRONJ(ブロンジェィ)は2003年に初めて日本で報告され、最近ようやく内科や歯科の連携がとれるようになってきた感がありますが、いまだ治療方法は無く、患部の定期的消毒とQOL(生活の質)の改善しか手立てがないのが現状なのです。
当医院でも2004年に当該症例を経験したため、2014.9.12に東京国際フォーラムにて開催された日本口腔インプラント学会で、「A case of bisphosphonate-related osteoNecrosis of the Jaw (bronj) after implant placement」=「ビスホスホネート製剤によると考えられる顎骨壊死の症例について」という演題で主演者として発表させていただきました。
「ビスホスホネート製剤」は主に骨転移をおこしやすい乳癌や前立腺がんなどに処方される骨代謝に関係する薬ですが、骨粗鬆症にも使われます。
日本では、インプラント学会や歯周病学会、口腔外科学会、骨代謝学会、臨床口腔病理学会等でBRONJ関連のポジションペーパーが2010年に刊行され、その後もアップデートもされていますが、コンセンサスの得られた治療方法は無いのが現状なのです。
BRONJ(ブロンジェィ)は口腔内に発現する極めて難治性の骨壊死ですが、腫瘍内科等で処方されている抗がん剤の副作用のひとつであり、主眼は生死にかかわる癌治療におかれているため、代替え薬の選択肢がなく、積極的な口腔内の外科介入も難しい(更に悪化させるリスクも大きい)のです。
また、癌の顎骨転移の可能性もあるため、問題をさらに難しくしているのが現状です。
まだ、日本で報告されて20年くらいしか経過していない傷病ですが、改善策並びに治療方法、治療薬がでてくることを待ち望むばかりです。